つい最近開設された都内のある特別養護老人ホームでは、自分のカレンダーを飾ることも禁止してベッドをローテーションしているという。建物の立派さに比べてなんとも貧しく、住まいの意味を考えないこんな管理のしかたは論外としても、和風のしつらえの文化は失われつつある一方、洋風の空間を自分らしくしつらえることが、多くの日本人の身についていないことも確かである。もう10年以上も前に、函館で案内された特別養護老人ホームに驚いたことあった。
[参考]
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すでに個室が実現していたこともさることながら、絵や花や手づくりの品々がたっぶりとしかも雑然とはせずに調和して飾られており、それによって、いかにも住まいらしい雰囲気が感じられたことに驚いたのである。施設長がフランス人の神父さんであると聞いて、洋風空間の住みこなしのみごとさに納得したのだった。もっとも「旭が丘の家」という名のこのホームの魅力は、地域に溶け込むさまざまの努力によって生まれたものであることを後で知った。入居している人々にとって心やすらぎ、活気ある住まいであるだけでなく、地域の人々をひきつける場であるこのホームは、若いカップルが結婚式を挙げる場にさえなっている。和風も生かしつつ、住みこなしの住文化をつくりあげていくことは、個別性への対応を実現することでもある。ここに取り上げてきたいくつかの項目は、それぞれが大切な課題であるとともに互いに重なり合ってもいる。住まい像としてはまだ曖昧さを残してはいるが、その重なりが〈やわらかな住まい〉である。